Linux PowerPCノートブックプロジェクト
オープンソースとしてリリースされるPowerPCノート. このプロジェクトではそれを現実にしたいと考えています.
この目標を達成するために, 既存の一般的なノートPCのシャーシに収まるようなカスタムマザーボードの設計といったタスクを行う必要があります.
このプロジェクトが発足した2014年の10月以来, 興味を示す支援者は着実に増え, 今は僅かではありますが電子回路設計に必要な確認, レビューを行えるような経験のあるボランティアが参加しています. それでも, 費やせる時間や技術的, 専門的な能力の不足のために現在は手詰まりになってしまっています.
この状況を打破するため, 2016年にはPowerPCマザーボードの設計の経験があるイタリアの工場, ACube Systemsにコンタクトを取りました. 幸運なことに, オープンハードウェア哲学の長期的な利点を理解し, 以前多様なPowerPCマザーボードを設計した経験がある, 情熱的な人々のグループと会うことができました. 彼らはその思想と技術のために私達のパートナーになるという最高の決断をしてくれました. ACubeと共にであれば電子回路設計を達成することができるはずです. 一方で, プロの設計者には対価が必要です.
そして今, その企業は本気で取り組むことを決めました. 不可欠な作業の対価を払うため, 資金獲得のキャンペーンを始めます.
2016年に私達は資金を管理し必要な契約を行うためミラン (イタリア) を本拠地として『Power Progress Community』を設立しました. この協会の目的はオープンハードウェアとオープンソースソフトウェアを採用することでPowerPC (PPC) プラットフォームに新しい命をもたらすことです. ここではプラットフォームの研究と発展を促進を狙った副次的な活動も共に行います.
詳細な計画はACubeと共同で準備されており, 今回はそれをこの文章で共有したいと考えています.
Power Progress CommunityとACubeはマザーボードをイタリアで設計, 作成することに合意しました. イタリアではx86プラットフォーム用に用意されたODM生産の15インチノートシャーシをロットで購入します.
現在の活動
PowerPCプラットフォームを蘇らせるPower Progress Communityの試みは一連の活動に着手することにつながりました. 以下では最も重要なもののうちいくつかを取り上げます.
私達は共通の目標と異なる能力を持つ情熱的な人々のコミュニティを確立し, ハードウェア, ソフトウェア, コミュニケーションの問題といった様々なテーマについて取り扱うグループをそれぞれ作成しました.
Debianの開発者によってPowerPCのサポートを打ち切るという発表がなされてから, 献身的なプログラマーのグループが合流し, 今はPowerPCへの移植の保守を引き継ぎ, 他のメインストリームの移植と同等のレベルに保とうと努めています. もちろん, このような膨大な作業を完了させるためにはより多くの情熱的な人員を探すことを怠ってはなりません. 心当たりがあれば躊躇せずWikiのページ (http://wiki.powerprogress.org/DebianPowerPcStartersManual) に目を通してみてください.
私達は協会のWebサイト (http://www.powerprogress.org/en/), ノートブックプロジェクトのWebサイト (http://www.powerpc-notebook.org/en/), ディスカッションフォーラム, そしてソーシャルメディアの専用アカウント (Twitter https://twitter.com/PowerProgressCo, Facebook https://www.facebook.com/powerpcnotebook/) で定期的に最新の情報を提供しています. 私達はPowerPCプラットフォームを支援することに関心がある他のプロジェクトと見解を共有し, 緊密に連絡を取り合います.
2年前から私達のチームはT2080 CPU (T2080RDB, リファレンス設計ボード) をベースにした開発キットを所有していましたが, 残念ながら開発者は多くの問題を抱えることになってしまいました. それでも現在ではそれらの問題は解決し, ハードウェアの初期化処理に決着をつける試みが再開されています.
ハードウェアグループでは, 数か月間, 必要となるマザーボードの電子部品の分析に挑戦していましたが, その時点で得ることのできた非常に限られた人員は製品レベルの品質を確保できませんでした. 既存の成果はプロの電子回路設計者に引き継がれ, より高いレベルで作業を開始するために活かされることになります.
ノートの技術仕様のほとんどを決定しましたが, 詳細は技術分析の中で変更される可能性があります. 現時点では, ノートの仕様は次のとおりになります (将来の変更の対象となりえます):
- CPU: NXP T208x, e6500 64ビット Altivecテクノロジー対応Powerアーキテクチャ
4 x e6500デュアルスレッドコア, 低遅延バックサイド2MB L2キャッシュ, 16GFLOPS x コア - RAM: 2 x DDR3L SO-DIMM用のRAMスロット
- グラフィックス: MXM Radeon HD ビデオカード (取り外し可能)
- 音声: サウンドチップ, 音声入力と音声出力のジャック
- USB: 3.0と2.0のポート
- ストレージ:
- NVM Express (NVMe), M.2 2280コネクタ
- 2 x SATA
- 1 x SDHCカードリーダー
- ネットワーク:
- 1 x イーサネットRJ-45コネクタ
- WiFi接続
- Bluetooth接続
- 電源: オンボードのバッテリー充電と電源管理
- シャーシ: 標準的な15,6インチのノートPCケース
最終目標とロードマップ
この資金調達キャンペーンの最終目標はどの会社でも生産できるように製品品質の電子回路図を公に提供することです. 回路図は, それを元にした徹底的にテストされたプロトタイプによって完全に動作することを保証します. 設計は非営利法人Power Progress Communityと契約したACube Systemsによって行われます. 得られた結果はACube Systemsとの書面合意の下でPower Progress Communityによって公に提供されます.
全体の活動と資金と人員の点で対応するリソースをより良い形で企画するため, 私達は次の4段階を設定しました. (為替は執筆時点の目安)
- ハードウェア部品の研究, 構成の分析, 電子回路図の設計 [12600ユーロ (約160万円), 合計30日]
- 電子回路図を元にしたプリント基板 (PCB) 用ガーバーフォーマットの制作 [11950ユーロ (約150万円), 合計30日]
- 5代の動作プロトタイプの製造と配送 [ 8800ユーロ (約110万円), 合計40日]
- 製造元 (ACube) によって提供されるソフトウェアを用いたハードウェア試験 [14400ユーロ (約185万円), 合計30日]
- CE認証の事前認証 [12,500ユーロ (約160万円)]
合計作業時間は時が経過するにつれ拡大しますが, 連続的なものではなく, PPC協会からACubeへもたらされる資金に従属し, 寄付の状況に大きく依存します.
第一段階: ハードウェア研究と設計
この段階では契約したプロのエンジニアとの協力の下, マザーボードのあらゆる部分に対する決断を下し, 設計を行います.
現在のハードウェア仕様に関する不確かな状況が改善し, 結果的に製造コストが削減されたあとすぐに最も繊細で重要な段階が来ることになります. 他の段階はスケジュールがより厳しく適用されなければならず, 更に短くすらされるかもしれません.
最初の契約は12600ユーロという数値目標に到達するよりも前にでも行うことができます. その後, キャンペーンは一定の期限なしに継続することになります. 一旦第一段階の12600の最終目標に到達したら, ACubeによってこの作業が実施され, その結果電子回路設計を作成することができるようになります.
第一段階の研究開発に関わる必要な情報は, 寄付が到着する頻度と速さに依りますが, 第一段階のため12,600ユーロが得られ次第, 設計を完成させ, その後提供されることになります.
最終的にマザーボードはオープンソースハードウェア要求に準拠しなければならないため, NDA (秘密保持契約) を要求するハードウェア部品を避けなければならないと強く感じています. しかし, 初期の研究で, ある機能を実装しようとした場合には100%オープンソースハードウェアという目標を達成するのは不可能かもしれないということが明らかになっています. それでも私達は最善を尽くします.
この段階の結果である最終的な設計は可能な限り共有され (いくつかのチップの利用はNDAが必要かもしれません), 「これは次の段階のために寄付するしかない」と感じるような魅力的なものであることを保証します.
資金調達の方法
どのようにクラウドファンディングをおこなうか, 相当の時間の議論を行った結果, 既存のどの商業プラットフォームも使わないことを決定しました.
非営利法人としていくつかの制約 (例えば商業製品を生産することができないことなど) がありますが, 期限がなく企画を制約されないという利点があります. 1回の寄付と定期的な, 「より少額」の月額寄付の両方の形での自由寄付を採用することができます.
以上で触れられたそれぞれの段階に対する資金は異なるステップで調達されることになり, それぞれACubeとの異なる契約を扱い, 各々にキャンペーンを行い, 必要な資金が集まり次第作業が開始されることになります. 製造元が第一段階の結果を送り次第, 次の段階に移り, 再び新しい目標のためにキャンペーンを始め, 一般の注意を集めることになります.
私達からは発生したあらゆる進展を公に共有し, すべての質問に答えるつもりです. 誰もがその結果の品質を検証し, 可能であれば, 私達が最終目標に到達するのを支援することができます. 寄贈者の一覧と, それぞれの人がプロジェクトにどれくらいの貢献をしたのかが公開されます. 一覧に載ることを希望するかしないかは銀行振込の際に伝えることができます. 以下にある指示をご覧ください.
もちろん, 誰でも, それぞれの段階や, その終わりに複数の寄付を送ることができますし, 1回のより大きい寄付を行うことも含めて, あらゆる選択を残した形になります.
支払い方法
オンラインでの寄付 – PayPal
“Donate”ボタンを押して, Payment Method (支払い方法) としてPayPalを選択してください.
オフライン寄付 – 銀行振込
以下に寄付のための銀行口座の詳細を載せます.
銀行名: Banca Etica
銀行口座所有者: POWER PROGRESS COMMUNITY
IBAN: IT94X0501801600000012339610
BIC SWIFT: CCRTIT2T84A
振込理由として次の事柄を記載してください.
次の例を見てください:
“PPC notebook donation – 名 ・ 姓”
(例: “PPC notebook donation – Taro Yamada”)
名と姓は寄付ページで入力したものと同じもので置き換えてください.
銀行振込を行ったあと,
“Donate”ボタンを押してPayment Method (支払い方法) としてOffline Donation (オフライン寄付) を選択してください
匿名の寄付
(オフライン, オンライン問わず) 寄付をするとき, 匿名の寄付を選択をできます.
このキャンペーンに関わっている人々
Power Progress Communityは任意参加を基本に貢献している, オープンソースハードウェア/ソフトウェア運動に感銘を受けた人々によって成り立つ非営利法人です. その目的は製品を売ることに主眼をおいたものではありません. 『PowerPCノート』はその1例です. 今回, Power Progress Communityは製造者に製造を始める動機を与えるのに十分に大きい潜在的な需要を確立しようと努めています.
Power Progress Communityは当初2014年10月に始まったPowerPC GNU/linuxノートプロジェクトでの活動の中で生まれました. この頃から, プロジェクトはフリー/オープンソースソフトウェアとPowerPCに, より一般的にはオープンなハードウェアと持続可能で, 倫理的な正しさと社会的な意識を兼ね備えた責任ある消費者としての行動について真に熱心な人々を集めていました. そして共に, 本来のプロジェクトを支持, 支援し, 更には将来的により大きいアイデアとプロジェクトを支えるため, この協会を作ることを決めたのです.
この協会は知識と専門能力を共有することを目的にソフトウェア (特にオープンソースソフトウェア) とオープンハードウェア (特にPowerPCとOpenPowerアーキテクチャに主眼をおくと同時にそれらに限らない) を促進し普及させます.
ACube Systemsは独自のPowerPCベースのマザーボードを生産するイタリアの会社です. このプロジェクトの初めから, ACube Systemsは私達のマザーボードを作製することを承諾してくれていました. 私達は, ACubeの人々がハードウェアに関するすべての技術的詳細を公開することを目的とした純粋なオープンソースハードウェアプロジェクトとして, 透明性のある方法を追求することを可能にしてくれたことに感謝しています.
FAQ
なぜ寄付なのか
商用のクラウドファンディングプラットフォームは製品の製造を支援することを目的としており, 更に, キャンペーンを開始するために動作するプロトタイプを要求していたために使用することができませんでした. 私達は製品を製造したり売ろうとしているのではなく研究や開発を行い, 支援しようとしており, そのためには開発工程の資金を捻出する必要があります. この仕事のための寄付を直接受け取り, 専用のWebサイトですべての結果を文書化するというのが私達が見つけた解決策です.
PowerPCノートを設計することはPower Progress Communityの目標の1つなので, 今回はこの非営利法人の公式目標を直接支援することになります. それぞれの寄付は自由寄付とみなされる必要があるなので, 実物の製品を受け取ることはないことを受け入れる必要があります. 寄付は, どの企業でもPowerPCプラットフォームに基づいた動作するマザーボードを製造できるようにするため, 必要な技術文書を公に入手可能にするという目標に用いられます.
第一段階を始めるための特定の期限は設定されていません. その代わり, ACube Systemsと契約するために最小限必要な額 (第一段階では4000ユーロ, 約50万円に設定) に到達した場合にのみ開始することにします. 一度契約が結ばれれば, ACubeは研究と設計を始めます. 私達の統計の結果, およそ100人の方々にすぐにでも第一段階を支援する意思があります. ですから私達は早くにも始められると確実な自信を抱いています.
最悪の場合のシナリオでは何が起こるのか
最悪の場合のシナリオでは, すべての支援者に対し集まった資金をどのように用いるか, 協会の目的に沿った形でなければならないという唯一の制約のもとで提案し, 投票を呼びかけます.
協会の目的は会員によって決定されるため, 支援者になる可能性がある方は年間の会員費 (http://www.powerprogress.org/en/membership/) を払ってPower Progress Communityに参加することができます.
寄付は自由で返金不可
Power Progress Communityはイタリアで設立された非営利財団です. イタリアの法律ではお礼に製品を贈ることではなく, 協会の目的や企画を追求することを意図した自由で返金不可の寄付のみが許されています.
イタリアでの非営利法人の制約
私達のような団体は次の制約を念頭に置く必要があります.
- 非営利法人は商業製品を作れない.
- 法人は寄付を受け取れるが返金できない.
- 法人はその目的に従わなければならず, その目標のために寄付を募うことが許される.
そのため, 私達は以下の点に基づいて始めることになります.
- 協会は寄付を募い, 受け取るために特定の目標を持つが, 返金はできない.
- 寄付は利他的なものでなければならないので, 誰も寄付の直接の見返りを得ることはない.
- イタリアの法律では協会が企画や活動のため研究開発に資金を用いることを許されている.
キャンペーンが失敗したときに何が起こるのか
以上で述べたように, どんな場合でも支援者に返金することはできません. そのため, この研究のための十分なお金が得られなかった場合には財団の目的に沿った他の目標のため用いられることになります.
受け取られたすべてのお金が研究に使われることになるのか
利用可能な支払い方法であるPayPalと銀行振込のどちらにおいても, ほとんどの場合それぞれの寄付に手数料がかかります. 営利企業とは異なり, PaypalにおいてはEU内では1.8%と0.35ユーロの手数料, EU外では2.8%と0.35ユーロの手数料がかかります. 銀行振り込みがEU外の銀行の場合手数料は6ユーロとなり高くなります.
キャペーンが目標を超えたときどうなるのか
集まった資金がキャンペーンの目標を超えた場合, 残りのお金は次の段階を達成するために用いられます.